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 Ross Xpres 2inch f1.9
 

Lens Data

Lens Unit

Lens Photo

・製造メーカー : Ross
・製造番号 : 176770
・設計者 : J.W.Hasselkus & G.A.Richmond
・製造年 : 1943-4
・特許番号 : GB323138A,GB507590
・特許申請日 : 28/01/1929,17/12/1937
・レンズ構成 : 4群6枚 ダブルガウス構成
・重量 : 181g
・最小絞り値 : f16
・絞り枚数 : 12
・最短撮影距離 : N.A.(改造後は1m)
・マウント : ライカスクリューマウントに改造

Lens Impression

Ross社レンズで最も明るいf1.9のXPRESです。レンズ前面のブラックペイントから浮き出た文字が美しいですね。このレンズはなぜかロボットカメラに固着されていたものですが、敢えて分解してライカ・マウントに変更していただきました。測定データによると開放ではかなりのオーバーコレクションで、他のロスレンズとは異なった傾向。ただし、f2.8以上ではほとんど無収差でかなり解像力が高いとのことです。実撮影でも開放でフレアじゃ若干目立ちますが、被写体の解像は高いですね。

レンズタイプはダブルガウス型ですが、これはf1.9のタイプに限られます。
Xpresレンズは明るさによってレンズ構成が異なっており、1914年にf4.5のXpresが開発された当時はテッサーの特許を回避するために後群を3枚貼り合わせにした(ライツのElmaxのような)構成で、その後のf3.5にも引き継がれましたが、後年通常のテッサー型(下図左)に戻されたようです。f2.9のXpresは3群5枚の「Dynar」型、Wide-Angle Xpresは下図中央のPlasmatタイプでした。そしてXpresではないですが、Xtralux50mmf2.0が下図右のガウスタイプですので、このf1.9Xpresは後のXtraluxと近いようにも思えます。


Xpres f3.5-4.5

Wide-Angle Xpres

Xtralux50mmf2.0


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Ross Ltdは、光学機器製造(天文測量)の技術見習いを終えたAndrew Ross(1798-1859)によって1830年に設立された。

当初は顕微鏡レンズが主体であったが、並行して光学レンズ製造に関与し、1838年頃からはタルボット(William Henry Fox Talbot) の注文を受け、写真用レンズを供給していた。
英国初のカロタイプ写真機にはRossのレンズが装着されていたが、ほぼ完成していたにも関わらず発表の手続きにこだわったと言われるタルボットがもう少し早く写真術の公表を行っていれば、もしかすると世界初の写真レンズの名はChevalierではなくRossとなっていたかもしれない。

Andrewの死後、息子のThomas.R.Rossが事業を引き継いだが、Andrewの弟子のJ.H.Dallmeyerが次女と結婚していたため財産が分与された。結局Andrewの死後1年でDallmeyerはThomasと分かれて自分の会社(ダルマイヤー社)を設立する(1860)。

1890年から第一次世界大戦終了の1914年までは、主にZeissのAnastigmatレンズをライセンス生産し、会社も発展する。さらにGörzレンズも生産した。簡単に列挙すると、
・1896-7年Planarの生産開始
(f3.6/3.8/4.0/4.2/4.5/5.0/6.0)
・1900年Unar生産販売開始(f4.5/5.0/5.3/5.6/6.3)
・1908-1914の期間はTessarも生産(f3.5/4.5/6.3)
・新設計のレンズも製作。Homocentric1902~、Ross Convertible (Protarの後継として)

同社はAndrewからThomasに引き継がれた際Thomas Ross&Coとなり、1871年に Ross&Co、1897年に株式会社化し正式にRoss Ltdとなったが、1922年に一度買収され、その後1949年にはBarnet-Ensign社に買収され姿を消した。

1913年J.W. HasselkusとG.A.Richmondがテッサーの特許を回避すべく、変形タイプの3群5枚レンズを設計し、Xpresと名付けて生産を始めた。
その後Xpresは同社の代表的レンズとなり、その後多くのタイプ(レンズ構成)のXpresが作られた。主なものを上げると、
・1910-20年代 f4.5/f3.5 3群5枚のテッサー後群追加型、後に3群4枚のテッサー型
・1930年代 f2.9 3群5枚の「Dynar」型
・1940年代前後から f1.9 4群6枚ダブルガウス型
など多種多様である。

 Photos with Ross Xpres 50mmf1.9
 
 2015
Yanaka,Nezu
(谷中、根津)
 

発売直後のα7RIIでの撮影です。
あまりうまくセッティングできなかったようで、かなりコントラストの低い描写となりました。
最近はコントラスト控えめの画像が好みですので、これはこれでよかったかもしれません。
連続の真夏日が終わった日とはいえ、かなり暑い、明るい日中でしたが、出来る限りf1.9開放もしくはf4以内で撮影するようにしています。
ロスのエクスプレス50mmf1.9は開放ではかなりのハロ、フレアが入ります。その味わいも今回は楽しんでいただけるのではないかと思います。

All photo were taken by Sony α7RII just introduced camera.
As I could not make a proper setting of the camera for this lens, photos are rather low contrast.

However I recently like such photos with modest contrast, the results of the day is not bad for me.
I tried to take with full aperture or less than f4.0 even it was hot and bright day which was the nest day of record making 8 continuous days more than 35 degrees max temperature.
Ross Xpress 5cm f1.9 lens shows moderate Halo and Flare at full aperture, you may enjoy that taste this time.


2013
Kamakura
(鎌倉近辺)

しばらく使う機会の少なかったロスのエキスプレス2インチf1.9ですが、久々に鎌倉に持ち出しました。
すっかり忘れていた、その描写ですが、結構そのシャープさに驚きました。ウォーレンサックのラプター51mmf1.5に肉薄するほどの印象です。勿論かすかな曇りによるフレアはありますが、正直、ここまで繊細さを保ったままシャープに表現してくれるとは思っていませんでした。画像をご覧いただければわかりますように、冬の頼りない日光の下で切れ味よく人の表情を写し出してくれました。
一方、近距離を開放で使用すると、被写体には柔らかさが生まれ、ボケは上品な2線ボケで楽しませてくれます。

Ross Xpres 2inch f1.9 lens which I have not so often been using recently, I this time brought it to Kamakura. and I was so astonished to the sharpness of expression. It seems to compete to Wollensak Raptar 51mmf1.5.
Frankly I have never thought that this lens express such sharpness with fine line. However, you might understand from some example photos how it describe subtle and shapp expressions of people despite under such weak winter sunshine..
On the other hand, when you use this lens in full apperture from close distance to the subject, it changes its taste to show
 more softness or tendreness with moderate 2 lines bokeh in the back.


2008
Hydepark Corner, Victoria Albert Museum
(ハイドパークコーナー、ビクトリア・アルバート博物館)

これも好きな描写をしてくれますね。ハイライトの微妙な滲み、僅かに2線ボケの入った、でも素直なボケ味が印象的です。一方で屋外でスナップした人物は、どれもシャープで繊細な描写をしています。DallmeyerのSeptacともやや似たイメージも感じました。

I
like the description of this lens. Subtle blur aroung the highlights, a little 2 lines double image but gentle bokeh is very impressive. On the other hand, the expression of people taken in snapshots shows very sharp and delicate. I felt the similar image with Dallmeyer Septac lens which I like very much also.