Som Berthiot Paris Flor 55mm f1.5
 

Lens Data

Lens Unit

Lens Photo

製造メーカー:S.O.M. Berthiot
設計者:Charles Henri Florian(推定)
製造番号:283946
製造年:c1940-42年
レンズ構成:5群7枚 前群ガウス型+後群スペシャル型
重量:500g
最小絞り値:f16
絞り枚数:16枚
最短距離:75cm
マウント:ライカスクリューマウント

Lens Impression

随分以前から憧れていたレンズですが、やっと手元にきました。しかも数ヶ月前にまさに到着直前に事故でレンズの一部が破損(外装)、長期の入院を経ての到着なので喜びのなおさらです。

レンズ外観は、クロームの大きなピントリングと、細い絞りリングのバランスが見事で、カメラに装着しても非常に美しい素晴らしいデザインです。このレンズはこのタイプ以外にも数種類のデザインが確認されていますが、全体でどのくらいのバリエーションがあるのかは、良くわかりません。
描写は開放ではかなりソフトではありますが、ぐるぐるも含めた「とても立体感のある」特徴的なボケが楽しめます。他のレンズには得られない描写ともいえるでしょう。
作例を増やしていくのが非常に楽しみなレンズです。

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SOM ベルチオのレンズ体系がひと通りの完成を見たのは、Florレンズが開発された1921年頃と考えられるが、その直後の1922年の同社カタログからレンズタイプを整理してみることとする。
 シリーズ Ia Stellor f3.5 4群4枚
 シリーズ Ib Stellor f4 3群5枚
 シリーズ Ic Flor f4.5 3群5枚
 シリーズ Id Color f4 4群4枚
 シリーズ IIa Olor f5.7 3群4枚
 シリーズ IIb Olor f6.8 3群4枚
 シリーズ IIc Orthor f7.5 3群3枚
 シリーズ III Eurygraphes f12-12.1 1群3枚
 シリーズ IVa Eurygraphes Symetriqus f6-6.4 2群6枚
 シリーズ IVc Trousses d'Eurigraphes casket lenses
 シリーズ VIa Perigraphe f14

これらレンズの設計者は、Stellor、Flor、Olor、OrthorがCharles Henri Florianで、Color がDr. Aron Polackと言われている。
定かではないが、おそらくFlorという名称は設計者のFlorian にちなんだのではないかと思われる。その後のFlorレンズの拡大から考えると、この名称にはかなり設計者の強い思いがあった可能性がある。

SOM ベルチオの35mmフォーマット用標準レンズにはFLOR 50mmf3.5、50mmf2.8、50mmf2.0、50mmf1.5、55mmf1.5などがある。レンズ構成は50mmf3.5はテッサー型、50mmf2.8は4群6枚の変形ダブルガウス型、50mmf2.0、50mmf1.5、55mmf1.5は後群が独自の形態の5群7枚の変形ダブルガウス型のようであるが、同社の一部のカタログには50mmf1.5に最後群を2分割した5群7枚の変形ダブルガウス型という構成図も記載があり、特定が難しい。

なぜ、f1.5レンズに50mmと55mmの2種類が存在するのか明確ではないが、55mmf1.5は、やや長焦点に設計されていること、イタリアのレクタフレックス、ドイツのエクサクタ、M42マウントなどの装着例が多いことから、元々は一眼レフでの使用を前提に設計されたものではないかと想定できる。ただ、併せて、イタリアのガンマ2型やフランスのリンクスなどのレンジファインダー機にも標準レンズとして供給されている。今回使用するレンズも、このいずれかに装着されていたものであろう。
いずれのf1.5レンズも非常に珍しいもので、特に50mmf1.5は市場に現れる頻度が極端に低いこと、広告などで具体的な装着例を見る機会がないことから、一般への市販はほとんど行われていない可能性もある。

  Photos with Som Berthiot 55mm
 
Comment
2013
Yono Taisho era Festival
(与野大正時代祭)

とてもたくさんの大正時代の人々と、コスプレの若者に会うことができました。
非常に良い天気でしたので、サン・ベルチオ フロール55mmf1.5を開放で使える場面は多くありませんでしたが、開放時の「独特の」立体感はいくつかの作例で楽しんでいただけるのではないでしょうか。
本当に
「このレンズにしかない描写」だと思います。

I could meet meny people wearing Taisho era costume, and many cosplay youth.
Because it was so fine day, i could take only a few pictures with this Som Berthiot Flor 55mm f1.5 at full aperture. But you can enjoy such unique expression of 3D by some photos.
I am convinced that this expression comes from not may lenses except this lens.


2008
Piccadilly
(ピカデリー付近)

クリスマスの飾りつけが出揃ってきた頃のピカデリーからボンドストリート近辺です。特徴的なボケが多くの作例に出ています。最下段の2,4枚目はその左の拡大部分ですが、特にコマ収差が目立っています。


2008
Shere
(シェア)

この非常に発音のしにくい村は、キャメロン・ディアス、ケイト・ウィンスレット、ジュード・ロウの主演でヒットした映画「ホリディ」の舞台となったところです。小さな村を歩くと、映画の主要な場面すべてがこの村に残っています。1段目のはじめの数枚はケイト・ウィンスレットが交換した田舎風の家があった場所ですが、この家だけは、セットとして作られたために、すでに取り壊されていました。ただ、他の写真は映画を追いかけても仕方が無いので、あえて、場面とは違うものを載せました。
2段目の右から2枚は同じ場面の前ボケと後ボケを比べられるように撮りましたが、「非点収差とコマ収差が残された、球面補正不足」のレンズとも定義すべき、2線ボケ傾向のある前ボケ、ぐるぐると流れはあるものの、ソフトにボケる後ボケがよく表れています。


2008
Bluebell Railways
(ブルーベル鉄道)

ブルーベル鉄道は、ロンドンから南に車で約1.5時間ほどの所にある、保存鉄道です。英国にはこのように歴史的な蒸気機関車を整備してかつての鉄道を保存している路線が数十ヶ所もあり、いずれも非常に素晴らしい状態を保って運行されております。このブルーベル鉄道も運営は約8000人のボランティアで実行されており、たとえば、この作例の駅員さん、運転士さんなども皆さん通常は銀行員であったり、医者であったりする人たちです。
そうそう、レンズの描写はやはり開放ではソフトな描写で、背景にはKino-Plasmatほどではないものの、結構なぐるぐるが見られます。一方ピント部分は柔らかさは残しつつもそれなりにシャープであり、中央と周辺のバランスのとれた描写が楽しめます。


2008
Maru building to Ginza
(丸ビルから銀座)

このレンズの使い初めは、東京です。
いかがでしょうか。全般的には柔らかな描写です。周辺にはそれなりのぐるぐるも見られます。一方で、中心部はKino-Plasmatのような滲みとは異なり、むしろヘクトールにも共通するハイライト部分を中心とした柔らかな滲みが見られます。さらに光線状態にもよりますが、ピントが来ている部分はある程度ピシッとする要素も持ち合わせているようです。


 
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